今回のモチーフは、『賢いきつねは狩人を狩る』との英国のことわざ(うろ覚えなので少々アヤ しいですが)に乗っ取り、狩人を狩る『対戦車自走砲』を取り上げてみました。  アーチャー・17ポンド対戦車自走砲は当時時代遅れになりつつあったバレンタイン歩兵戦車の シャーシを流用して作られた、究極のコンパクトさを誇る自走砲です。当時、急速に進化を遂げつつ あったドイツ戦車(虎さんや豹さん)の装甲を、アウトレンジで貫徹できる数少ない連合軍側の火砲 が、英国の17ポンド対戦車砲でした。ところがこの砲を搭載できる砲塔を持ったサイズの戦車は当時 の連合国側では限られており、実用になっていたのはわずかにシャーマン戦車を改造した英国戦車隊の ファイアフライ駆逐戦車(ほたるちゃん)のみでした。そこで、改造ゲテモノ好きの英国人はまたまた とんでもない窮余の策を考え付くことになります。  それは、当時初期設計に余裕のないのが災いして、それ以上の拡張性も改造の余地もなく、時代遅れ になってきていたバレンタイン歩兵戦車の上部構造物をすべて取り去り、簡単な装甲戦闘室を設けて 長大な17ポンド砲を何と『後ろ向きに』搭載する、というものでした。当然、走行中の発砲は出来ず、 その戦法は『待ち伏せをして発砲したらすたこら逃げる』という、まさに『後ろ向きなヤツ』として アーチャー(弓手)対戦車自走砲は生まれました。  歩兵戦車にカテゴライズされたとはいえ、元々巡航戦車として設計されていたバレンタイン戦車の シャーシを流用して軽量化したものなので、その逃げ足は実に素早く、アーチャーは穴に隠れ、木陰 に身を潜め、と、まさに『狩人を狩る森の狩人』の名に値する活躍をしたのでした。 (BeauFighter)